田の草を卒業するということ
お米がおいしくて、地球の自然環境再生に大きな効力を持つ、生きものいっぱいの田んぼ。「何でこんなに良い方法が広がらないのですか?」という質問をよく受けます。その答えは、田の草取りが大変だからなのです。
農村に行くと、草を取り続けて腰が90度に曲がっている年配のご婦人を見かけます。次の世代の農業者には、除草剤という救世主?が現れました。撒けば草は一網打尽です。耕さない・冬・水・田んぼは、無農薬です。優れた農法なので、確かに出る草は少ないのですが、まったく生えないわけではありません。それに転換したばかりの田んぼは、かなり草に苦労するのです。2度と昔に戻りたくない、「草取りはいや」、そう思うのもうなずけます。そこで、今回は田の草の理想と現実について、考えてみました。
地球の歴史・命の視点で考えよう
●水と緑の力を生かそう
現代の水、土、空気の汚染状況は、地球の浄化力に甘えきってきた人間の危機ですから、地球の営みの基本に戻りましょう。この地球上で、唯一の生産者は植物ですよね。中学の理科で習います。動物や人間が消費者で、菌が分解者です。人間はいくら生産しているように見えても、地球にある物を使って形を変えているだけです。でも植物は、光合成という技を持っていますから、水と空気と太陽光という地球の外からのエネルギーを使ってでんぷんを作ります。これが地球の富の始まりです。地球の酸素もその大半は、水辺の藻類が光合成によって吐き出したものです。
人間は植物が作った生産物の上前をはねて生きているわけですから、上前だけにしておけば良いのに、昔の石油を掘り出したりして、今の生産量以上を消費しているので、環境破壊の上、ジリ貧状態です。この状況を解決するには、生活の仕方、食べ方を変える意識改革と、混交林を育てたり、水と緑の力を生かした農業を育てていくしかありません。
カメムシが教えてくれたこと
● カメムシの害とは
カメムシの害にあったお米は、斑点米と呼ばれています。お米の形が少し欠けていて、そのふちがこげ茶色になっているお米が斑点米です。稲の穂が出てから登熟するまでの間に、カメムシに針を刺されてお米の中身を少し吸われてしまうと、こうなります。これだけなら、ご飯を食べていて、たまに茶色くなったお米を目にするだけで、全く無害である上、おいしいお米の味も変わりません。
アクエリアン革命が始まっている
●命を育む水の技術
21世紀は水の世紀。この6月、万博協会から「持続可能な地球環境に有効な技術100件」に選ばれた「藻類の働きに注目した緩速ろ過装置」と「ふゆみずたんぼ」の2つの技術は、まさに命を育む水がテーマです。水といえば、21世紀のもう一つのテーマである自然エネルギーは、人間が逆立ちしても真似できない光合成で効率よくエネルギーをつくる緑の働きや、必要に応じて次々と現れる微生物の働きを活用することが最善の方法だと思いますが、これも命を育む水の使い方が技術の鍵になります。
土・水・米は生きものたちがつくる
●人知を超えた自然の働きに感動したできごと
あれは日本海ナホトカ号重油流出事故の時でした。私は、油を食べる菌の研究など、バイオ科学が進んでいると聞いているのに、相変わらず界面活性剤しか撒けない国の対応は、遅れているのではないかと思い、海岸に流れ着いた重油の塊を、数人の菌の研究者に送って実験をしてもらったり、科学技術庁に今後の重油流出事故の際、バイオを使った対応を研究してもらいたいと、意見したりしていました。
しかし2つとも大きな問題がありました。菌の研究者のほうは、菌の秘密が流出することを恐れ、公開実験を辞退したり、国のほうには、変化する恐れのある生命(菌)を海に入れることはできないという法律があり、私の計画は頓挫しました。