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中村陽子のコラム

2005年6月21日

土・水・米は生きものたちがつくる

●人知を超えた自然の働きに感動したできごと
 あれは日本海ナホトカ号重油流出事故の時でした。私は、油を食べる菌の研究など、バイオ科学が進んでいると聞いているのに、相変わらず界面活性剤しか撒けない国の対応は、遅れているのではないかと思い、海岸に流れ着いた重油の塊を、数人の菌の研究者に送って実験をしてもらったり、科学技術庁に今後の重油流出事故の際、バイオを使った対応を研究してもらいたいと、意見したりしていました。 
 しかし2つとも大きな問題がありました。菌の研究者のほうは、菌の秘密が流出することを恐れ、公開実験を辞退したり、国のほうには、変化する恐れのある生命(菌)を海に入れることはできないという法律があり、私の計画は頓挫しました。


 実はこの間、海では、ふだん少ししかいない油を食べる菌が増えて海をきれいにしはじめ、その菌の写真が金沢大学の研究者によって撮影され発浮ウれました。一方、重油で鳴かなくなった鳴き砂の海岸は、連日訪れるボランティアの人たちが、3段階のふるいで取り除き、約1ヶ月あまりですっかりきれいにしてしまいました。
 必要なときに現れてすっかり海をきれいにしてくれた油を食べる菌の存在、日本の海の一大事に集まってきて人海戦術ですっかり海岸をきれいにしてくれた人間の存在に感動しました。私は何をしていたんだろう、自然の営みの外側に立って評論していたのではないかと反省しました。自然の力と、人間の力の両方が信じられるようになったきっかけの出来事でした。
●この人間主義の洗礼を受けた人々
 この洗礼を受けると、自然の力の偉大さに目覚めたとしても、人間の無力感に陥ることはありません。「バクテリアを呼ぶ男」の著者、葉坂勝さんは、ある時、堆肥の山の中腹から、ボッと湯気が上がりだす瞬間を目にして、微生物の存在を実感し、ごみ処理のプラントを立ち上げました。「私は人間に嫌われるより、菌に嫌われるほうが|い」と彼は言います。「ニンジンから宇宙へ」への著者、赤峰勝人さんは、理想的な土を作ろうと近代農業を極めようとしていたとき、その土地に生える草だけを積み重ねてできた土が理想の土だったことを偶然発見し、180度方向転換して循環農法を完成しました。この心境を、物理学者ホーキングは、人間主義と言います。菌の働きや草の働き、自然の摂理や宇宙の秩序が、どんなに完璧ですばらしくても、それを認識し、感動し、称賛し、行動に移せる人間の存在が不可欠で、同じくらいすばらしいということです。
●もてぎ環境フォーラムは人と自然の合作発負�/p>
メダカのがっこうが棚田を復元しようとしている栃木県茂木町にも、人と自然の共同作業を形にした面白い事例があります。この町では、地元のお年寄りが集めた山の落ち葉の菌を使って、|木や落とした枝を粉砕したオガクズや蓄糞、生ごみなどを発酵させて、すばらしい堆肥を作っています。
 また、メダカのがっこうの棚田には、ゆっくりした流れの水で生きものの働きを助ェ引き出し水を浄化する緩速ろ過装置が設置してあります。これはローテクでハイクオリティー、誰でも作れるのに、高性狽ナす。
 また、世間ではその価値をあまり知られていないイトミミズやユスリカ、カエルやクモなど生きものの働きを活かして稲を育てている生きものいっぱいの田んぼもあります。
 地球が瀕死の状態にあるとき、人間だけが健康食品やサプリメントで元気になろうなんて、潔い生き方とは思えません。土や水、野生の生きものたちと共に元気になる方法を、もてぎ環境フォーラムでいくつか提案します。自然の摂理の妙、生きものたちの働き、それを引き出せる人間のすばらしさが見えてくると思います。ご一緒に考えましょう。ご参加をお待ちしています。