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中村陽子のコラム

2002年11月18日

父なる空、母なる大地

 先日、ザンビアの大統領が、遺伝子組換えされた小麦の輸入をアメリカに断った、というニュースがありました。「国民が飢えていたとしても、食とは命、訳の分からないものを、食べさせるわけにはいかない」というのです。“命に向き合う気高い魂”が、今でも健在なのを知り、私はとても感動しました。
 私の中に確かにある、命に焦点を合わせた魂の中心、私はこれを毎日、地球の命に合わせていて、それをセンタリングと呼んでいます。私が基準にしている、命に向き合う気高い魂を一部分ご紹介します。(以下「父は空 母は大地」バロル舎より抜粋)


「1854年 アメリカの第14代大統領フランクリン・ピアスは インディアンたちの土地を買収し 居留地をあたえると垂オ出た。1855年 インディアンの首長シアトルはこの条約に署名。これは シアトル首長が大統領に宛てた手紙である。」
「空気は すばらしいもの。それは すべての生きものの命を支え その命に 魂を吹き込む。生まれたばかりの私に はじめての息を あたえてくれた風は 死んでゆくわたしの 最後の吐息を うけいれる風。
水面を駆けぬける風の音や 雨が洗い清めた空気の匂い 松の香りに染まった やわらかい闇。ヨタカの さみしげな鳴き声や 夜の池のほとりの カエルのおしゃべりを 聞くことができなかったら 人生にはいったい どんな意味があるというのだろう。
獣たちが すべて消えてしまったら 深い魂のさみしさから 人間も死んでしまうだろう。
生まれたばかりの赤ん坊が 母の胸の鼓動をしたうように わたしたちは この大地をしたっている。
もし わたしたちが どうしても ここを立ち去らなければ ならないのだとしたら どうか 白い人よ わたしたちが 大切にしたように この大地を 大切にしてほしい。わたしたちが愛したように 愛してほしい。いつまでも。どうか いつまでも。」
 私は毎朝この手紙を読んで、この気高い魂に向き合います。 私たちは、このような成熟した魂を持ち、地球を大切にしてきた先住民の人々を居留地に追いやりました。この150年間、私たちが地球にしてきたことを思い起すと、本当に垂オ訳なくて、涙が出ます。毎朝「ごめんなさい」と謝罪し、地球の命に私の魂をセンタリングします。 
 でも、私は今全く絶望していません。一時は、人間のしてきたことが、地球を破壊し、自然の摂理を無視して 破滅に向かってまっしぐらに走っていると思っていましたが、それを解決する方法が結高�ることを知り、これを行動に移していけば、今まで絶望的だった環境のデータ≠焉Aいい方向に変えられることが分かったからです。
 「メダカのがっこう」もその一つ、耕さない自然耕の田んぼが、命を育む水辺として広がれば、空と大地と人間との絆を修復してくれると思い、始めました。
 例えば、冬の田んぼに水を張るだけで、今年絶滅危惧種のニホンアカガエルがたくさん繁殖しました。一日100種の生物が絶滅しているそうですが、その半数以上が田んぼの生きものだと聞いています。しかし、ほんの少し人間が行動を変えるだけで、生きる環境は変わります。データ≠熾マわります。
 メダカのがっこうが今年始めた、田んぼの生きもの調査は、実際に田んぼの中の生きものたちをを覗くことによって、命の視点で農業を考えようという動きです。具体的な目的が二つあります。一つは、どういう農法が生きものにとって良い環境なのかを調べること。もう一つは、良い環境にいると思われる生きものたちを生物指標にあげ、そのような生きものたちの生きる環境を守っている農家に、制度としてお金が支払らわれるよう、定量化をし、命を敢えて経済の枠の中にいれる試みです。
 インディアンの首長の言葉にはこうあります。「ワシントンの首長が土地を買いたいといってきた。どうしたら空が買えるというのだろう?そして大地を。わたちにはわからない。風の匂いや水のきらめきを あなたはいったいどうやって買おうというのだろう?」その通りですよね。
 でも悲しいかな、お金にならないものは大切にされない世の中になってしまって久しいので、私達は、水や空気やかけがえのない命に、値段をつけて、守ることにしたのです。