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中村陽子のコラム

2001年3月5日

田畑の命と人の命

地球上でどんな生物が繁栄するかを決定するのは、神様ではなくて、ミネラルバランスです。ですから、土の中でどんな微生物がどんなバランスで活性化するかを決めているのもミネラルバランス、人の体の中でどんな菌がどんなバランスで元気になるかを決めているのもミネラルバランスです。人間が地球上の土や水や空気のミネラルバランスを変化させ、そのために生態系が変わり、いままで眠っていた菌が目を覚まして繁殖し、増えすぎた人間を減らしたとしても、何の不思議もありません。
しかし、私たちは人間ですから、人間をはじめとしたいま地球上で繁栄している生命の立場でものを考えると、この世の中には、私たちの体を良いミネラルバランスに整えるものと、崩すもの、の二つしかありません。 今まで私が調べてきた塩についても、いくらたくさんの塩があっても、体のミネラルバランスを整える塩と、崩す塩があるだけです。


海のミネラルバランスは、地球の歴史の中ではとても変化してきていますが、ちょうど塩分濃度が0.9%くらいで、あるバランスの時、人間の祖先が誕生しました。その後、海は急激に濃度を高めた時期があり、それを乗り切るために私たちの祖先は、内なる海を0.9%に保つ機能を獲得しました。人間にとって塩分は、体液の材料であり、酵素の原料であり、腸内細菌の活性剤であり、神経伝達物質です。これらに有効に働く体液に近いバランスで海から取り出そうとした塩がいい塩です。
これに対し、バランスを崩す塩とは、塩の主成分は塩化ナトリウムだから、それだけでいいと考えて取り出された塩と、添加物の塩(グルタミン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、亜硝酸塩、などのナトリウム化合物)です。
私たちの食も、例えば人参が良いとか、悪いとかではなく、私たちの体のミネラルバランスを整える人参がいい人参です。りんごも同じ、たまに木の下に落ちているりんごが、腐らずに発酵して甘い香りが漂うことがありますが、よほどミネラルバランスのいい水で細胞をいっぱいにしているのでしょう。
いい作物を育てるのは、ミネラルバランスのいい土です。健康な土にはその重量の3%の土壌菌が住み、ミミズをはじめとした土壌動物や虫がとてもいいバランスでいます。アリストテレスは、ミミズを「地球の腸」と言いました。健康な人間にも体重の3%の腸内細菌がとてもいいバランスで住んでいます。
いい米はいいミネラルバランスの田んぼで育ちます。このような田んぼの中では、たくさんの田んぼの生きものたちが、生命循環を維持できるいいバランスで生きています。
田んぼをいいミネラルバランスに保つには、特別な元素(肥料)、特別な菌を入れないこと、草や虫を殺さないこと。 いままで化学肥料と農薬で既にバランスを崩しているところは、その悪循環から抜け出すために、少し海のミネラルを使うと、いい菌や生きものたちがいいバランスで元気になります。あとはそこに湧く藻から始まる多種多様の生きものたちに任せておけば大丈夫。年々ミネラルバランスが整い、地力がつきます。
命を育むミネラルバランスは、人間の科学が解明した元素の役割の応用=資材やサプリメントの投入では取り戻せません。田んぼや畑の命をみんな大切に、地球の命をみんな愛しく思うのが始まりです。