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中村陽子のコラム

1999年5月18日

虫について

一昔前、自然農法の野菜は形も悪く、虫も食っているが、安全で体に良いと言われていました。「化学肥料で大きく育ち、見てくれが良くても、農薬をかけて虫も食わないような野菜は駄目なんだ。虫は本当においしいものを良く知っている。」と言うような阜サをされていました。
「いや、そうではない。本当にミネラルバランスの良い土で育った健康な野菜は、下葉の2〜3枚しか虫に食われない。人間が食べるところまで影響しない。それに畑の作物の3割は虫の取り分だよ。」と生命力の大切さと大らかさを教えてくれた人がいました。


「実は虫は神虫さんです。未熟堆肥や窒素肥料を使うと、分解の途中でアンモニア態窒素や亜硝酸という人間にとって毒性のあるものになります。その毒性のガスの臭いにひきつけられて蛾が卵を産みつけ、幼虫が作物を食べ尽くす。人間が食べたら毒なるものを虫は食べてくれ、それは虫にとっても毒なので子孫も残せずに死んで土に還って無害化してくれている。だから虫は神虫さんなんです。」と畑での凄い発見を教えてくれたのは循環農法の赤峰勝人さんでした。
「虫はみんな益虫です。」と言うのは、十草農法の廣野さんです。「昔、草を取ってしまったところのカブだけに虫がついたことがありました。草があるところでは虫は草についてきれいなカブが出来ました。一昨年、ミカンキイロアザミウマと言う虫が大発生しました。これはほとんどの野菜につき、ウイルスも発見され新聞に載るなどして、農家にとって大変な害虫でしたが、十草農法のニンジン畑では、草だけを全部食べてくれたお蔭で、収穫間近のニンジンに太陽があたり大変甘く出来たのです。ですから虫はみんな益虫です。」とミカンキイロアザミウマがニンジン畑一面にとまっている写真と、その虫が雑草だけを食べ尽くした様子を写真で見せてくれました。
この方々の実体験による草と虫と作物と人との絶妙な関係の発見で、私の虫に対する意識は180度変わりました。虫のご馳走と人間のご馳走が違うなんてすばらしい発見です。
訳あって生えてくる草を大切に見守っていると、作物と養分を取り合うことなく太陽と水と空気を吸って育ち、その根っこにはミミズが喜ぶ地元の菌が住み、葉や茎は虫の住処やご馳走になり、枯れてはミネラルバランスのとれた命豊かな土を作ってくれます。そこには作物をめぐって人間が張合って殺すべきものは、何もありません。あまりにも調和の取れた自然の摂理を知ると、是非ともこの夢のような世界を実現したいものだと思います。