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中村陽子のコラム

2007年10月3日

「田の草とどう折り合いをつけるか」の知恵比べ

●農薬を使わない稲作の難しさ
 6月の田の草取りツアーでは、昨年まで草の中に稲が立っていた郡山の田んぼも、コナギの絨毯の中に稲が生えていた佐渡の棚田もかなり草が少なく、「今年は良いぞ」という感じでした。ところが、8月の定例の生きもの調査に行ってみると、草が勢いを取り戻していたり、イネミズゾウムシに根っこの隋をやられてしまった田んぼを見たりと、今年もいろいろな問題が起きていることが分かりました。冷害や台風の被害も辛いですが、薬を撒けば防げることが分かっているのに、丹精込めた稲が虫や病気にやられるのは、どんなに辛いことでしょう。改めて農薬を使わない稲作りの難しさを感じました。


●問題の田んぼを見せてくれるようになった農家
 メダカのがっこうを始めてからずっと、農家は理想的な田んぼしか見せてくれませんでした。生きものいっぱいで、すでに土ができていて田の草も生えていない、耕さない・冬・水・田んぼの良いところが集まっているような田んぼです。これはこれで私たちに希望を与えてくれました。
しかし、私たちがこの6年、年4回田んぼに通い、生きもの調査を続け、農家と一緒に生きものの働きを活用する稲作りを模索しているので、人間関係が同志的なつながりに変化してきたのだと思います。消費者には一番良い田んぼしか見せない農家の方たちが、私たちメダカのがっこうには、いろいろな田んぼを見せてくれて、私たちがもっと田んぼのことを知り、稲作りの現実を正しく把握するように、問題を見せてくれるようになりました。
●理論と実践の違い
農家の名誉のために言っておきますが、どの農家も不思議と田の草が生えない土ができている田んぼや、理論どおりのタイミングで作業ができて抑草に成功した田んぼを持っています。ところが、広く田んぼを手がけている農家は、田植えだけでも数週間かかり、苗の元気の盛りを逃したり、抑草に必要な資材の調達に失敗したり、撒く時機を逸したりする田んぼが出てきます。どうやらそういうことが、問題が発生する1つの原因になっているように思います。このタイミングのずれを克明に記録すると、一年でかなりのデータが蓄積すると思うのですが、農作業で忙しい農家にとって容易なことではありません。できれば係りをつけて記録したい仕事です。
●田の草をどうクリアーするか
 勿論、土を作り、田んぼの状況に合った抑草技術をタイミングよく実行して、草の生えない田んぼを目指すことが第一です。これで成功する田んぼもあります。しかし、それでも草が生えた時、①除草機を押し、手除草をして草のない田んぼを目指し続けるか、②田んぼに1回も入らないで、収穫量が少なくなるのを覚悟で草といっしょに稲を育てるか、の2つの道に分かれます。
惰農を嫌い、草のない美しい田んぼを目指すほとんどの農家は①を選び、大変な努力をしています。またこの田んぼの姿を見せないと、後に続く農家が増えてくれません。
でも先日生きもの調査に行った草も稲も元気な田んぼの農家の方が、「1度も田んぼに入らずに(10アール当り)6俵穫れたら御の字ですよ」というおおらかな言葉を聞き、この感覚を持てたらよいなあ、と感じました。また生きもの調査をしている私たちにとって、この田んぼには生物多様性の美しさがありました。草も稲も生きものたちもみんな元気なのです。稲も草に負けていないのです。みんなを養うだけの地力があるのでしょう。
●第3回田の草フォーラムやります!
 来年早々、2008年1月19(土),20(日)第3回田の草フォーラムをします。場所は、今まで2回連続長野県松本市でしたが、今回は大田原市ふれあいの丘シャトー・エスポワールというところです。夜の部までみっちり勉強し、交流会をします。
今年も様々な形で田の草と取り組んで、成果を出している農家の方たちに発表していただき、クリアーできる幅を広げていきたいと思います。コメンテイターとして、民間稲作研究所の稲葉光圀さん、自然農法センターの岩石真嗣さん、NPO田んぼの岩渕成紀さん、をお招きしています。総評としての講演もお願いしています。2日目には、8町歩の冬・水・田んぼで無農薬の稲作りをしている水口博さんの農場見学があります。
皆様のご参加をお待ちしています。