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中村陽子のコラム

2015年12月20日

日本人の乳酸菌の宝庫、たくあん・ぬか漬けは自分で作ろう。

 12月はたくあん漬けの季節。メダカのがっこうの自給自足くらぶでは、首まで土に埋まった在来種のたくあん大根を半月程干してしんなりしたものを、摺(す)りたてのぬかと日本の海のミネラルバランスの良い塩と、ミカンやカキの皮、昆布や唐辛子と一緒に漬け込み、重しをうんとかけてたくあんを漬け込みました。農薬、化学肥料、添加物を一切使わない本物のたくあん漬けです。食べられるのは来年3月、それまでは冬野菜のぬか漬けで我慢です。たくあんはぬか漬けの保存食版ですが、大根の効能と独特の味わいがプラスされます。

 ぬか漬けは日本人の腸内細菌にぴったりの乳酸菌です。ちょうど欧米人のヨーグルトに当たります。戦後食生活が欧米化して様々なヨーグルトがもてはやされていますが、日本人のお腹には先祖から住み着いている乳酸菌が合うのです。またぬか漬けは、あらゆる食材の中でもトップクラスの栄養素を持っています。それは、米ぬかが、タンパク質、脂質、繊維質、カルシウム、リン、鉄、ビタミンA(カロチン)、B1、B2、ナイアシンなどを豊富に含んでいるからです。ぬか漬けは日本が生んだ食の傑作と言えるでしょう。

 それでは、野菜の食べ方として、ぬか漬けの優れた点を5つ挙げてみましょう。
(1)ぬか漬けは生の野菜よりビタミンB類がアップ
 お野菜をぬか漬けにすると、浸透圧で野菜の水分が抜け、ぬかに含まれる栄養分を吸収します。そのため、生野菜よりビタミン含有量が増えます。特に大根は吸収が良く生大根に比べると、ビタミンB1は16倍、ビタミンB2 は4倍、ビタミンB6は6倍、カルシウムが2倍になるというデータがあります。他の野菜でもビタミンB1の含有量が3~10倍になります。
(2)ぬか漬けは白米の欠陥を補完する
 ビタミンB1は、脳のエネルギーとなるブドウ糖の分解に必要な成分で、もともと玄米に含まれていますが、米の精白過程でその多くが失われてしまいます。そのため、白米とぬか漬けの組み合わせは、お互いを補い、脳の働きを高める食べ方といえます。
(3)ぬか漬けは生野菜より消化酵素を活発にする
 酵素はすべての生野菜に含まれているものですが、塩分で野菜の細胞を死滅させると、その働きがより活発になり、野菜内のタンパク質を分解して旨味のもとであるアミノ酸に変える働きします。ですから、ぬか漬けには食べものの消化を促進してくれる消化酵素がたっぷり。食べ過ぎにより分解しきれないタンパク質や脂質が体内にたまっている現代人に最適です。
(4)ぬか漬けは、GABA を豊富に摂取できる食材
 GABAは旨味を作り出すアミノ酸の一種ですが、通常野菜からは殆ど摂取できません。この成分には脳内の血流を活発にし、酸素供給量を増やし、脳細胞の代謝機能を高める働きがあります。ぬか漬けはぬかが発酵する過程でGABAが豊富に作り出されます。つまり、ぬか漬けにはイライラを防ぎ、気分を落ち着かせる働きがあります。
(5)ぬか漬けは、乳酸菌を生きたまま腸に届ける
 ぬか漬けは、腸で生き抜く力が強い植物性乳酸菌をもっているので、体内に入ると胃をくぐり抜けて大腸まで達し、そこを生活の場として食中毒菌の棲みにくい環境をつくったり、便秘解消など体調を整える働きをしてくれます。
 ちなみに、乳酸菌の説明をしておくと、乳酸菌は大きく分けて2つあります。
 乳酸菌で代表的なヨーグルトやチーズに含まれる乳酸菌は動物性の母体で発酵する「動物性乳酸菌」、また漬物やお酒など植物を母体に発酵するものは植物性乳酸菌です。多くの乳酸菌は胃酸で死んでしまい腸まで辿り着かないことが多い中、植物性乳酸菌は生きたまま腸まで行く強い力を持っています。そして、生きたまま腸に届いた乳酸菌は、直接悪玉菌を退治してくれるのです。
 このほかに、○脚気(かっけ)の薬 ○糖尿病の予防 ○脳卒中の予防 ○大腸がんや胃がん肝臓がん予防 ○胆石の予防 ○胃腸の強化 ○肥満を防止 ○歯や骨を丈夫にする ○バストアップ、ダイエット、美肌効果 ○ダイオキシン排出量は基本食の3~4倍になるなど、“おそるべし! ぬか漬けの効能”というところです。

 それでは、ぬか漬けはいつごろからなぜ作られたのでしょう。
 発祥とされるのは江戸時代です。白米を食べる習慣が始まり、大量の米ぬかが出回ったため、一般家庭でも盛んに作られるようになりました。それまでは、奈良時代から臼でついた穀類や大豆を漬け床とする漬物がありましたが、その穀類や大豆の代わりに米ぬかを使ったのがぬか床の始まりだと考えられています。
 江戸で白米を食べる習慣が広まると、将軍をはじめ上層武士の多くが脚気に罹り、江戸患いと呼ばれました。この脚気を予防するため、ビタミンB1を野菜に吸収させて食べるぬか漬けが普及したようです。
 また、江戸の町に暮らす多くの独身男性たちは、味噌汁を作るのが面倒な時でも、ぬか漬けと納豆を食べて健康を維持していました。繰り返し何回も使えて、野菜の切れ端などを漬けておくだけのぬか床は、それだけ“便利なもの”というイメージだったのです。

 たくあんは干した大根のぬか漬で、ぬかに昆布や塩、干した柿やミカンの皮、トウガラシなどを混ぜ込んで隙間なく漬け込み、重しをかけた保存食です。ぬか漬けは漬けすぎると溶けてしまいますが、たくあんは何年でも持ちます。そして、効能はぬか漬けと同じです。たくあん2切れで1日の乳酸菌は摂取できます。
 しかし、市場に出回っているたくあんの実態は、大変なことになっています。特に、お弁当や定食のお供についている安い真っ黄色のたくあんは要注意です。大量生産する黄色いたくあんには食品添加物がたくさん含まれています。食品添加物といえば、化学薬品、発がん性の恐れもある怖いものです。黄色いたくあんの食品表示を確認してみてください。大根、食塩、ぬかの他にグルタミン酸ナトリウム、ブドウ糖果糖液糖、ソルビン酸カリウム、黄色4号、黄色5号、赤色5号など10種類以上もの食品添加物からたくあんが作られています。
 たくあんは、無添加で作ったとしても真黄色ではありませんが、ほんのり黄色くはなります。これは大根に含まれる糖分がたんぱく質と結びついて「メイラード反応」と呼ばれる野菜を熟成発酵させる場合に起こる色の変化です。この反応でできるメラノイジンが細胞の再生能力をアップさせ放射能対策に良いことは、このコラムの8月の味噌のところで述べたとおりです。
 しかし、真黄色のたくあんはアレルギー性の高さや喘息、じんましんなどの原因から問題視されているタール色素「黄色4号」の合成着色料(色粉と呼ばれているもの)でできているものです。これでは、乳酸菌が含まれて腸にいいはずの発酵食品が体に危険な食べ物に変わってしまいます。
 体にいい成分が多く、効能抜群のたくあんですが、市場では無農薬の大根と米ぬか、ミネラルバランスが良い海塩で漬け、無添加で商品に仕上げたものは手に入りません。
 そこで、メダカのがっこうでは、花まる農家と手を結んで、自分たちで作ることにしたのです。
 自給自足とは、保存食を作ることでもあります。3ヵ月先、1年先、2年先、3年先のために今準備する暮らし方が必要です。1月2月は味噌の寒仕込み、3月は醤油の仕込み。
 皆さん、メダカのがっこうの自給自足くらぶで一家、一族、仲間のグループの1年分を仕込みませんか? 詳しくはメダカのがっこうのHPの参加者募集か、ショップでご覧ください。