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田んぼのいきものだより

2018年5月2日

身近にいる白いチョウ

すっかり季節は春。ヘビやカエルが畦を歩き回り、ハチやチョウが田んぼや畑の畦に咲く小さな草花の上を飛び交っています。その中でも恐らく一番目に留まりやすいのは、3~4㎝程度の白い翅の誰もが知っているチョウ。モンシロチョウ…なのですが、あなたの目の前を飛んでいるチョウは本当にモンシロチョウでしょうか?

モンシロチョウ

実は、同じくらいの大きさ、同じ白い翅を持つチョウが他にも何種類かいるのです。翅に黒い筋の入ったチョウ、スジグロシロチョウ。

スジグロシロチョウ

翅の裏側は黄色いけれど表側は白いモンキチョウのメス。

モンキチョウのメス 翅の表が白い個体もいる

そしてもう一種類、モンシロチョウと同じ白い翅ですが、オスの翅先が少しだけオレンジ色のチョウ、ツマキチョウです。

ツマキチョウ

見分け方は、モンシロチョウよりやや小型な事と、止まってくれれば翅先の色の違いや下翅に網目状の模様があることですぐに分かります。飛んでいてもヒラヒラと飛ぶモンシロチョウに比べ、バタバタ翅を小刻みに羽ばたかせ、直線的に飛んでいるので慣れてくると違いが分かります。

ツマキチョウは一年に一度この時期にしか羽化せず、成虫の寿命は数週間。今の時期にしか見ることができないチョウで、どこにでもいるのに、あまり知られていない綺麗な可愛いチョウです。

今回紹介したチョウは、モンシロチョウが生息している場所であれば大抵の場所で観察できる可能性があります。暖かくもなり散歩に出掛けることも苦にならなくって来ました。いつも見る、見慣れたつもりの草花や虫達も、実はちょっと気を付けて見てみると自分の思っていたものとは別の姿、別の種類かもしれませんよ。どんな生きものが自分の周りにいるのか、ちょっと気を付けて観察しながら歩いてみませんか?

 


2018年1月10日

冬の田んぼ

季節はもう冬。少し前まで真っ赤になったアキアカネが数えきれないほど飛びかい、少し歩けば無数のイナゴが飛び跳ねていた田んぼも、今はとても静かに寂しく見えます。

生きものが冬を乗り越えるための大きな問題の一つが、エサの少ないことです。そこで、多く生きものはエネルギーの消費を抑えて過ごせるよう、できるだけ動かずじっとして暮らしています。特にチョウやバッタに代表されるような田んぼの昆虫たちの多くは、エサが全く必要のない、卵や蛹の形で冬を越し、来年の春を待ちます。

アキアカネやイナゴは田んぼの泥や、畦の土の中で卵の姿で冬を越えますし、モンシロチョウやキアゲハといったチョウの仲間の多くは蛹で、静かに春が来るのを待っています。

ところが、この何もいないようにも見える、静かな冬の田んぼの畔を歩いていると、突然4~5㎝程度の大きなバッタが飛び出すことがあります。クビキリギスやツチイナゴというバッタです。このバッタはあえて厳しい冬を成虫の姿で越すことで、来春、他の虫達がまだ生まれてきていないか、生まれていても小さな幼虫の姿である間に、沢山のエサを食べ競争に勝つという戦略をとっているのです。

クビキリギス

実はこの戦略をとっているのはこのバッタの仲間だけでなく、チョウでは、キチョウや、キタテハ。トンボではオツネントンボが冬を成虫の姿で乗り切ります。キタテハや、キチョウは、冬の間でも暖かい日に地面の低い位置を飛び、わずかに咲いているタンポポなどの花の蜜を吸っている姿を見ることも出来ます。

冬僅かに咲く、タンポポの蜜を吸う

キタテハ

オツネントンボ

 

 

 

 

 

なかなか外に出ようとは思えない寒い季節ですが、天気がいい日には頑張って田んぼの畔を歩いてみるのも面白いと思います。思いがけず、きれいなチョウを見つけることが出来るかもしれませんよ。


2015年5月19日

水口さんの生きもの調査 2015.05.07

椿さんに引き続き、水口さんの田んぼに生きもの調査へ行って参りました。暖かい日が続いたのと、田んぼに水を入れてから、一か月近くが経過していることもあり、たくさんの生きものを観察することができました。特に多かったのがカエル。それも産卵期を迎えた、トウキョウダルマガエル、ニホンアマガエルが非常に多くみつかりました。

また、田んぼの中にはすでにオタマジャクシが泳いでいました。眼の少し下あたりに、一対の黒い斑点のあるオタマジャクシ。これは、ニホンアカガエルのオタマジャクシです。ニホンアカガエルは、他の田んぼでみられるカエルより、少し早い3月~4月初めに卵を産むため、もう3センチ程度の大きさになっていました。水口さんは、今年カラスが多く田んぼに来て、カエルを食べてしまったとおっしゃっていましたが、そんな事は感じさせないぐらい、多くのカエルを観察することできました。

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田んぼの中を覗くと、椿さんの田んぼに負けず劣らず、ものすごい数のミジンコの仲間達が泳ぎ回っていました。これから、田んぼにはオタマジャクシが溢れる季節。エサの準備も万端のようです。今回の調査では動物種としては、32種を観察することができました。水口さんの田んぼは、昨年度はタガメや、ミズカマキリなどオタマジャクシやカエルを主なエサとしている生物も観察されているので、今期も今後の調査で観察できる可能性が大きくなりました。

畦に生える植物も、42種観察することができました。まだ、田の中に生える植物は見当たりませんでしたが、椿さんの田んぼと同様に、どの種も決して珍しい植物ということはないのですが、除草剤の影響を受けやすい植物も多く観察され、植物の側からみても多様な環境が保たれているのを見てとることができました。

水口さんの田んぼには、今週末24日に、田植えのイベントも控えております。田植え作業中にも様々な生きもの達が観察できるかと思いますので、参加される方は、それも楽しみに来て下さいね。


2015年5月8日

椿さん生きもの調査 2015.4.24

4月24日に椿さん田んぼへ生きもの調査に伺いました。4月初旬~中旬は雨が多く気温も低かったのですが多くの生きものを観察することができました。非常に数が多かったのが、ミジンコの仲間。腕を田んぼに入れて引き上げるだけで腕にミジンコが張り付いて赤く見える程でした。またユスリカやイトミミズもすでに田んぼの泥の中には発生していました。

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カイミジンコ

このミジンコやユスリカをエサに、これから多くのオタマジャクシや、小型のゲンゴロウ類が、田んぼに集まってくるかと思います。数は少なかったですがすでにゲンゴロウの仲間は観察することができましたし、トウキョウダルマガエル・アマガエルの成体もすでに田んぼにきていました。今回の調査で観察できたのは29種でしたが、これから非常に賑やかな田んぼになっていくかと思います。

 

ニホンアマガエル

植物については、代掻き、入水の直後ということもあり田の中には、まだ生えていない状態でしたが、畦は色とりどりの植物が咲いていましたので、何種類か簡単に紹介させてもらいます。まずは、畦を紫に染めている「ムラサキサギゴケ」です。

ムラサキサギゴケ

ムラサキサギゴケ

同じ仲間で白花のものがあり、これが鳥のサギに見えるのと、コケのように地面を這って生えるため、サギゴケの名が付きました。その仲間で紫色の花が咲く種ということでこの名がついています。

次は小さな白い花、「ノミノフスマ」です。春の七草の一つハコベに近い仲間で、ハコベを少しか弱くしたようなイメージの植物です。フスマとは、昔の掛布団のことようで、蚤が使うほど小さいということで、「ノミノフスマ」と付いています。恐らく葉をフスマに見立てているのかと思います。

ノミノフスマ

ノミノフスマ

最後は、キュウリグサ。ワスレナグサに近い種類の植物で、花はとても良く似ていますが、ワスレナグサよりも更に小さな花を咲かせます。草を摘んで揉むとキュウリに似た匂いがするということで、「キュウリグサ」と付いています。

キュウリグサ

上、ジシバリの 中、キュウリグサ 下、トキワハゼ

その他、植物は38種を観察することができました。どの種も決して珍しい植物ということはないのですが、この当たり前にあるべき植物達すら、除草剤をまいている田には生えていません。植物が無いと、それを住処やエサとする動物も寄り付かず、それに加えて殺虫剤を撒くことで、イネしか生きもののいない沈黙の田んぼとなってしまいます。

いつまでも、この当たり前の賑やかな田んぼを見ることができるよう、農薬、除草剤を使わない農家さんを応援していきたいと、今季初の生きもの調査で再確認できました。

今回の調査の結果や、見られた生きものの種名等は、別の形できちんとご報告をしたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。


2015年3月27日

ニホンイモリ

今回は、ニホンイモリを紹介します。別名はアカハライモリ。背中は黒っぽい色をしていて、田んぼを上から覗いてみてもあまり目立ちませんが、腹側は赤い地色に黒の模様が入っていて非常に目立ちます。

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ニホンイモリ

この赤い色は警戒色と呼ばれるもの。実はフグ毒と同じ成分、テトロドトキシンという猛毒をもっている生きものでもあります。まずは背中の保護色で見つかり辛くしておき、見つかってしまった場合も、この赤い色で自分に毒があることを知らせ、食べられないように工夫しています。ただし、触っても特に問題はありません。傷口がある場合に少しピリピリとした感じがする程度。食べてしまった場合はどうなのか分かりませんが、触った後にはよく手を洗うように注意する程度で大丈夫です。

春に産卵し、孵った幼生は田んぼなどの水中で過ごします。姿はカエルの幼生とは違い、外鰓という呼吸器官が頭の周りに出ています。成長し手足が出てくるころには、一昔前に流行ったウーパールーパーを小さくしたような姿になりとても愛らしいです。それ以上に大きくなると外鰓が吸収されて無くなり小さなイモリになります。こうなるとカエルと同じで肺呼吸になります。

非常に生命力の強い生きもので、水温は0℃位から35℃程度まで平気です。寿命も長く、少なくとも25年。きちんとしたデータは無いようですが、50年位生きるという話もあります。また、再生能力にも優れている生きもので、手足や、尻尾などが切れてなくなってしまっても、骨まで完全に再生することができます(トカゲの尻尾が再生するのは有名ですが、骨までは再生しません)。

そんな生命力にあふれるニホンイモリですが、やはり数を減らしている生きものとして、紹介しなければなりません。原因はやはり水質の悪化や、農薬の影響。その他にも、きれいな生きものなので海外の両生類マニアからの需要もあり大量に捕獲されてしまったといのも要因となっているようです。

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水面を見つめるニホンイモリ

カエル・ザリガニをも上回る子供達の人気者、ニホンイモリ。もう少しで、産卵のために田んぼに多く集まってくる季節になります。

今年も出会えることを楽しみにしています。

 


2015年3月13日

ニホンマムシ

関東の田んぼで出会うことができるヘビは、アオダイショウ、シマヘビ、ヒバカリ、ヤマカガシ、マムシの5種の内の一つである場合が多いかなと思います。今回は、その中でも、ちょっと注意の必要なヘビ、マムシを紹介します。

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ニホンマムシ

マムシの特徴は、身体に小判型の斑紋模様が並んでいることです。頭が三角形になっているともよく言われますが、他のヘビも威嚇する際には頭を三角形に変形させるので、私は模様で見分けるのが一番良い方法だと思います。慣れるとフィールドでも見分けることができるようになると思いますので、しっかり覚えて下さい。比べてもらうためにアオダイショウとシマヘビの写真も載せておきます。

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アオダイショウ

 

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シマヘビ

これらの種類も、子供のうちはマムシによく似た模様があり、マムシに間違われることがあります。ただ、さわらぬ神に祟りなし。マムシに似ていると思う場合はもちろん、確実に無毒のヘビだという確信が無い限りは無闇にヘビに手を出さないでください。

ただ、気を付けていても田んぼの中では誤って踏んでしまう事や、手に触れてしまう事があります。そういう時には咬まれる事もあるので咬まれた場合について少しだけ触れておきます。

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草地のマムシ 枯草に紛れ見分けがつきづらい

マムシは猛毒のヘビで噛まれるとすぐに死んでしまう。というようなイメージがあるかと思いますが、実際の致死率はそう高くはありません。噛まれた場合はまず落ち着くこと。慌てて走ったりしては余計に毒のまわりを速めてしまうことになります。まずは医療機関へと連絡を入れ、落ち着いて病院へ向かいましょう。現場での応急処置としては咬み傷周辺を強く押して毒を絞り出す程度に留めます。口で毒を吸うこと、咬まれた場所を縛ること、傷口を開いて毒を出す等の行為は、あまり意味が無かったり、余計に悪化させたりする恐れがあるので、やめておきましょう。

さて、そんな毒を持つマムシですが性格はとても臆病で、こちらから手を出さない限りは、マムシの方から積極的に噛みつきにやってくるということはありません。遠目から見る分には模様のとても綺麗なヘビです。また生態には興味深いところもあります。それは、卵胎生といわれる繁殖方法をとっていること。卵胎生とは簡単に言うとお腹の中で卵を孵し、子供を産む方法。つまり、マムシは見かけ上は卵ではなく子供を産むヘビだということになります。夏の終わり頃から秋口にかけて10尾前後の子供を産むそうです。

マムシは、田んぼの生態系ではピラミッドのトップに入る生きものです。マムシがいる事は生態系が豊かな場所であることの証にもなりますし、マムシ自身もその環境ではとても重要な生きものです。無暗に怖がったり、駆除の対象にしたりはしないで、適切な距離を知って接するようにしてほしいと思います。


2015年3月5日

ヤマトシジミ

ヤマトシジミ

今回紹介するのは、田の畔でよく見かけるチョウの一種、ヤマトシジミです。羽を広げた状態でも大きさは2.5㎝程度と非常に小さなチョウです。

名前の由来は羽を閉じた姿が二枚貝のシジミに形が似ているから。それに大和の国でよく見かけるという意味でヤマトの名が冠されたのだと思います。

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ヤマトシジミ

名前はあまり有名ではありませんが、都会でもちょっと気にしていると一番よく見ることができるチョウだと思います。田の畔以外でもちょっとした草原や、場合によってはアスファルトで舗装された道路の脇でも、この薄い青色の小さなチョウは見ることができます。

このチョウがどこでも目にすることができる理由。それは食草(幼虫の食べる植物)に秘密があります。このチョウの食草はカタバミのという植物。やはり名前はあまり有名ではありませんが、舗装された道路の隙間、本来植えていた植物が枯れてしまった後、放置していた鉢やプランター、もちろん草原や田の畔、等々、どんな場所でも4つ葉のクローバーのような葉に、小さな黄色い花が咲くこの花を見つけることができるか思います。

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カタバミ

そしてどこから見ていたのか、その周りには卵を産むため、もしくは花の蜜を吸う為に、ヤマトシジミがよく飛んでいるのです。皆さんも、通勤、通学、お買い物の行き帰り、是非、道路の脇に生えているカタバミやその周りを飛んでいる、ヤマトシジミを探してみて下さい。

チョウの仲間はその食草が、種類毎に違っていることが多く、多くの種類のチョウがいるということは、多くの種類の植物がその場所に生えているという事の証拠の一つにもなります。メダカのがっこうの花丸農家さんの田んぼには、このヤマトシジミをはじめ、チョウの仲間も多くみることができますので、色々と紹介をさせて頂きたいと思います。