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中村陽子のコラム

1999年9月3日

人間の素晴らしさ

生命連鎖の中にいる生き物自身は、別に次の生命の餌になろうとか、役に立つ死に方をしようとは、思っていないでしょう。しかし、自然界では、植物が光合成によって、澱粉などの形にした太陽エネルギーを出発点として、次々と生物が食べて生きる糧とし、死骸という形あるエネルギーが残っているうちは、それを使って生きる生命が現れて、最後に菌により無機(=無気、エネルギーがゼロ)になるまで分解されます。
良い土で、理想的に出来たにんじんは、酸性土壌を改良してくれたススキや茅、カルシウムを作ってくれたスギナ、春先寒さから守ってくれたハコベや、土を作ってくれた土壌動物や菌の働きに感謝したりはしません。
しかし人間には、このつながりが見えます。


命のつながりの中を移動する生命エネルギーの流れ、僅かなミネラルが生物の間をそれぞれの生命反応をつかさどる酵素を動かしながら形を換えて移動する様子、地球の水が循環しながら、これらのミネラルを海に溜めていく過程、こうして、この地球には、大木から草、動物、虫、ミミズ、菌にいたるまで、善玉も悪玉もなく無駄なものは一つもないという循環の法に触れると、恐れが無くなるので生きるのが楽しくなります。これを知る能力が、人間の素晴らしさだと思います。
我が身を振り返ると、土から生まれたものを土に返していない本当に申し訳ない私です。せめて死んだら出来るだけたくさんの生命を通って土に返らなければ、無駄死だと思いました。ネパールでは、聖地に五体投地で巡礼する途中、寒さなどで死ぬと、成仏させるため皆で石をぶつけて死体をこなごなにし、鳥に食べてもらうそうですが、それも肯けます。
また、生命は自分の住む環境を浄化しながら生きています。水草は水を、植物は土を、魚は海の汚れをきれいにしています。人間は? 実は人間は、もっと素晴らしい能力の持ち主なのです。自然の仕組みを知れば知るほど、私達人間は、なんて調和の取れた世界に生まれてきたのかと感心してしまいますが、草や虫や菌一つ一つの命やそれを支える土や水に、「ほんとに凄いことが出来るのですね、ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるだけで、皆を元気にきれいにすることが出来るのです。信じられないでしょうが、本当です。
これは最近、世界の水道や湧水を凍らせての結晶写真を取っている人が、写真で証明してくれました。ある日彼が思いついて“ありがとう”という言葉を見せてから水の結晶写真を取ったところ、汚れていて形をなさなかった水が、きれいな六角形の結晶になったのです。命は水がめですから、この方法は全ての命に有効だということです。
光合成も分解も出来ない人間の本当の素晴らしさを発見しました。やはり、人間に生まれてきて良かったと思います。