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中村陽子のコラム

2017年5月20日

種子法廃止につづいて品種の多様性と種子情報が奪われる!

 前回の続報です。主要農作物種子法を廃止する法律案の外に、次の3法律案が可決されています。農業競争力強化支援法案、農業機械化促進法を廃止する等の法律案、土地改良法等の一部を改正する法律案。このうちほんの一部を読み解いてみました。

 農業競争力強化支援法案って何を強化する法律案だと思いますか。
 例えば、第8条の3では、「少量多品種な生産資材の銘柄集約のための地方公共団体等の基準の見直し」という訳のわからない法案は、先人たちが営々と開発努力をしてきたおかげで、在来種を含めて600以上に及ぶ稲の品種があるのですが、これら少量多品種の種子を維持管理することは民間では採算が取れないので、「銘柄集約」つまり、5~6品種くらいに減らそうというものらしいです。「農業競争力強化」とは、日本の農業を強くすることではなく、外資を含めた民間企業を強くするための法案なのです。
 種子の多様性こそ気候変動や病虫害から守る道なのに、何かあったら日本の米が滅亡してしまいます。

 また、第8条の4では、「種子その他の種苗に関わる民間事業者による生産及び供給等の促進」という文章からは何のことか読み取れませんが、実は、独立行政法人や試験研究機関、都道府県が持っている種子情報を、大手企業や海外の種子企業に無償で提供しなさいということらしいです。
 長年にわたって研究開発されてきた在来種を含めて600種以上、奨励品種だけでも300種以上の稲の品種情報が、外資を含めた民間企業に提供されてしまいます。
 種子の開発には、多くの時間とお金がかかりますが、日本が蓄積してきた優秀な品種の情報を無償で譲り受けた民間企業が、次に発芽できない遺伝子操作を施して品種登録すれば、これはすでに民間企業の所有物となり、特許権が生じ、企業は開発費を使わないで特許料や種代が入る仕組みです。まさに外資を含めた民間企業の競争力を強化支援する法案なのです。

 日本の農家が稲を自家採種栽培するのは10%程度ですから、都道府県が種を提供できなくなると、海外の種子企業の稲種子を日本の生産者は買うことになります。彼らが市場を支配すると、まだ安全性についてカルタヘナ法=遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、の承認がとれていませんが遺伝子組換え稲種子がついにやってくると思います。食品安全委員会はすでに安全だといっていますから申請さえすれば作付できるようになります。

 それでは食品安全委員会は、なぜ安全だというのでしょうか?
 なぜかというと、安全でないという研究はすべて伏せられ、安全だという研究だけが採用されるからです。
 昔からそうでした。世界最初の圧力団体である砂糖業界は、奴隷制度への批判も、砂糖の摂りすぎが健康を害するというWHOやアメリカ農水省の注意書きも消し去る力を持っているのです。最強の戦略物資である種を握ろうとしている多国籍企業の最大株主はビルゲイツだそうですから、日本の行政が立ち向かえるはずがありません。

 なぜ、国民のほとんどが願わない法案が簡単に通ってしまうのでしょうか?
 それは、内閣総理大臣が、総理大臣の諮問機関である規制改革推進会議を使って総理のご意向通りの答申を出させ、それを閣議決定し、反対しない官僚を使って立法案を作成し、保守多数の国会で可決できるからです。
 調べてみると、規制改革推進会議には、国民から選ばれた国会議員も、実際に生産している農家もいません。議長は日本郵船株式会社取締役の草刈隆郎氏、続いて大学教授、ヤマトホールディングス株式会社会長、証券会社社長、キャスター、ディレクター、経営の専門家など15名、農林水産専門委員は、東京大学大学院農学生命科学研究科教授の本間正義氏以下、大学教授や農業経営者の編集長、富士通総研の研究員など5名という少数の有識者といわれる方たちが、国の存亡にかかわる重大事を答申したメンバーです。

 もし、すべての国民がこの法案の内容を知ったら、9割が反対するはずですが、国会(衆議院)では、賛成158票(自民、公明、維新)、反対73票(民進、共産、社民、生活)の大差で可決されました。反対意見の質問をした議員まで、党則に従って賛成したそうです。国会議員が自分の考え通りに票を入れられない国が日本なのです。まるで見えない鎖に縛られた奴隷のようです。私はこれらの法案に賛成票を投じた国会議員を決して許しません。国会議員には命を張って国民の命と先祖からの財産を守っていただきたいです。
 まだこの一大事を知らない農家もたくさんいます。種を扱う当事者なのに、相談されませんでした。国が秘密裡に国家滅亡を企てた場合、誰が罰したらいいのでしょう。それは国民しかありません。先ずこの危機的状況を周りの方に知らせてください。

 次世代に生きる環境と安全な食糧に困らない日本を残すためには、放置できない展開になっています。次回までにもっと勉強して、私たちができることを提案します。