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中村陽子のコラム

中村陽子のコラム

2013年2月5日

田んぼはみんなを守っている

今年メダカのがっこうは、田んぼの存在の大切さをもっと知ってもらおうと思い、「田んぼはみんなを守っている」というのぼり旗を作り積極的にアピール始めました。田んぼの減反、日本人のお米離れからくるお米余りからくる田んぼの減反、お米が足りなかったら外国から輸入すればいいと軽く考えている日本の官僚たち。それはとんでもない考えです。田んぼは単なるお米の生産場所ではありません。田んぼは日本の宝です。そこで、田んぼの働きがどれほど素晴らしいものかを今日はいくつか挙げてみたいと思います。
1. 田んぼは塩害による砂漠化から日本の国土を守っている。
地球の歴史では、文明が栄え農耕が盛んになったところから砂漠化しています。耕してかんがい用水を撒いた農地は、地中の塩分や化学肥料として撒かれた物質が水が蒸散するときに地表に浮上し白っぽく貼り付き塩害化が始まります。こうして砂漠化が広がっていきました。それにひきかえ、日本の田んぼは1年のうち数ヶ月水が張られることで、毎年その塩害が地中に浸透し、砂漠化しなくてすんでいます。何千年もの間、農地として使い続けてこられたのは、田んぼに張る水のおかげです。
2. 田んぼは連作障害から農地を守っている。
畑で栽培する作物のうち、根のもの、葉のもの、実のものは、それぞれ必要とする微量ミネラルが違い、毎年同じものを一箇所で作り続けると、必要とするミネラルが不足し作物が病気にかかったりよく育たなくなります。これを連作障害といいます。それにひきかえ、田んぼは毎年入れる水が微量ミネラルを補給するので、何千年も同じ場所で同じ作物である米を作り続けることができるのです。
3. 田んぼはダムのように自然破壊することなく、日本の水源を守っている。
田んぼは人間が作った浅い水たまりと言えます。その面積は、国土の7%、湖沼の面積が国土の2%ですから、保水力の大きさがわかります。
4. 田んぼは日本の穏やかな雨の降り方を守っている。
自然農法の父、福岡正信さんは、「雨は下から降る」と言いました。砂漠の空の上にも雲は流れているのですが、もしそこに山手線の内側くらいの広さに草を生やすことができると、その葉っぱから水分が蒸散するとそこに小さな低気圧ができ、空を流れている雲が降りてきて雨を降らせるのです。福岡正信さんは、種が入った粘土団子を砂漠に蒔くことで草原をつくり、雨雲を呼び砂漠を緑化する構想を持っていました。日本では田んぼが雨を呼ぶ働きをしていると思います。ところがその田んぼがどんどん放置され、放置田、休耕田がどんどん増え、田んぼの水面がどんどん減っています。このことが、日本の四季や穏やかな雨の降り方に、悪影響を及ぼしていると私は考えています。今や乾季と雨季にはっきり分かれているサバンナのような激しい気候に近づいているようです。
5. 田んぼは水辺の生きものたちの住処を守っている。
この場合の田んぼは、冬や早春から水を張る田んぼのことです。田んぼと言えば、カエル、ドジョウ、メダカ、タニシ、トンボ、バッタ、サギ、カモなどが浮かびますが、これらの生きものたちの餌となり命を支えているイトミミズやユスリカなどは、田んぼに水が張ってあると恐しいほど繁殖します。何千年もの間、日本の田んぼは、たくさんの水辺の生きものたちの命をつないできました。冬の田んぼに水を張るのは水の無駄使いではありません。反対に水が不足する地域ほど、冬の間から田んぼに水を張ってきました。戦後、田んぼの乾田化がほぼ100%にまで進み、1年のうち3ヶ月半しか水が張られなくなり、絶滅危惧種が激増しました。絶滅危惧種の約半分は水辺の生きものたちなのです。
6.田んぼは日本人の優しい心や歌の心を守っている。
この場合も水が張ってある田んぼのことです。「帰る雁 田毎の月に 曇る夜に」(与謝蕪村) 秋、稲刈り後の棚田には昔は水が張ってあったようで、その水面に月が映り、その空をシベリアに帰る雁が隊列をつくって飛んでいる様を歌ったものです。2001年からメダカのがっこうも平坦部の田んぼで冬水田んぼを始めましたが、その水面に雪を頂いた山々や広い空が映る様は本当に美しいので感動します。深さ15センチ位の浅さとは知りながら、湖のような風景に心が癒されます。東北の田んぼではこの水面を目指して白鳥や雁がシベリアから渡ってきます。その姿を見ると道行くトラックの運転手さんもしばし眺めたり、近所のこどもたちや年配の方たちが見に来たりします。
7. 田んぼは日本の文化や景観を守っている。
田んぼには1年中行事があります。田植え前の田の神を迎えるお祭、地域の田植えが終わると「さなぶり」、台風の前には「風祭」、稲刈りの前のお祭、稲刈り後の収穫祭や秋祭り、年末にはワラでしめ縄作り、どんと焼きなど、私が知っているだけでもこれだけあります。また農家の方たちは集落全体の山の下草刈、ドブ掃除、神社の手入れ、畦や土手の草刈など、日を決めて共同作業で整備してくれています。この無償の働きをお金に換算すると日本全体で年間37兆円にもなるそうです。
皆さん、田んぼはみんなを守っているのです。田んぼがなくなると、日本がなくなってしまいます。本気でお米食とお米文化を復活させましょう。 

2013年2月5日

お米はみんなの健康を守っている

 今年、メダカのがっこうは「お米党宣言」をしました。戦後、お米を食べると頭が悪くなるとか、カロリーが同じならご飯もパンもかわらない現代栄養学にすっかり洗脳され、日本人のお米離れが進み、今年ついに小麦の消費量がお米の消費量を超えてしまいました。私の子ども時代は昭和30年代ですが、栄養価が高い肉や魚や卵や乳製品をたくさん摂るのが良くて、「ご飯は残してもおかずを残さず食べなさい」と親からも先生からも言われたものです。しかも給食は全部コッペパンと食パンでした。母がハンバーグを作ってくれたのが小学校1年生の時で、その後食事の欧米化とスイーツと全体として食べ過ぎの食生活が浸透してきました。その結果、日本人の血管の壁は脆くなり、血液はドロドロになって循環器の病気とガンが急増しました。それでもなおかつ蛋白質の摂り過ぎの状況を変えようとせず、今だにご飯は糖尿病の敵であり、ダイエットの敵だとされています。今こそお米を見直してみましょう!
お米を食べるとどんな良いことがあるか 
お米の効能についていくつか挙げてみましょう。
 ①お米を食べると36.5度の恒常体温が保てます。赤ん坊は37.5度で生まれてきて、こども時代を37度程で過ごし、おとなになると36.5度が平熱になり、歳をとるに従って35度と下がっていき、全ての機能が衰えると34度以下になって死んでいきます。古文書に「米はその性温なり」とあり、米からできる血は、36.5度の恒常体温を作ってくれる大切な食物であると記されています。この36.5度の体温は、腸内細菌の善玉菌が働きやすく、悪玉菌が働きにくい温度であり、その人の免疫力の源でもあります。
 ②またお米を食べると、きめ細かい細胞ができます。例えば、玉の肌と言って田んぼ仕事の泥もするっと水で流れる美しい肌を作ってくれます。また傷のつきもよく、若杉ばあちゃんの話によると、昔の日本人は指が飛んでも、すぐ乗せて縛っておけば元通りになったそうです。それにひきかえ、パンを食べて出来た細胞はきめが荒く、同じ傷でも縫わなければ治らなくなったそうです。
 ③また日本人はお米を食べると、踏ん張る力が出ます。男という字は、田んぼに力と書きますが、昔の農家の男は60kgの俵はもちろん、少し力自慢の男は2俵のお米が担げました。村の運動会では、毎年60kgの俵を担いで走る競技があったそうです。長いあいだ米を主食にしてきた日本人は、腸の長さが長く、腸内細菌もお米に合っているのです。エチオピアでもエフという主食に変わって小麦が入ってきたとき、小麦では力が出ない言う声があったそうです。体格では欧米人に及ばない日本人ですが、小柄な身体に体力や気力がみなぎっていたのです。身体の大きさで競う必要はないのです。
 ④ご飯は、お米と水だけで短時間で無添加で炊けるので安全です。これをパンと比較すると、パンは材料だけでも小麦粉と水の他にイースト菌と砂糖とバターと塩が必要で、しかも発酵に時間がかかります。もし、お米と小麦粉の勝負なら、手軽さにかけてお米の勝利は明白ですが、今は企業がパンにして売っているわけですからパン食の方が簡単になってしまいました。しかしそのパンは何週間おいてもカビない危険な食物です。
 ⑤お米はお米を主食とする民族にとって、特別の存在です。「お米の効能は他のものの及ばないところである。」と記しているのは、中国に伝わる神農本草経を日本に紹介した食物本草です。その中に「米は内蔵の活動力をまし、煩悶をなくし、下痢の止め、筋骨を壮健にし、血液の流れをよくし、五臓の働きを整え、胃の活動を補い助ける。それ故、他のものと比べて論じてはいけない。」とあります。
⑥最後に伝えなければならないことは、お米のパワーは、玄米か胚芽がついている分づき米が持っているということです。日本語のコメという音は、彦(ヒコ)のコと、姫(ヒメ)のメで成り立っています。コはお米の澱粉の部分をさし、メは胚芽の部分をさしています。つまり命を生み出す男と女のパワーを持っている食物なのです。ですから、コメは、芽が出る部分がついている玄米を指しています。せいぜい胚芽を残している分づき米までがコメと言えるでしょう。もちろん、生きものいっぱいの田んぼで育った無農薬栽培のお米のパワーが最高です。
お米から広がる醸造発酵の豊かな食生活
 お米があれば、ご飯が炊ける、麹が作れる、甘酒が作れる、お酒が作れる、みりんが作れる、お酢が作れる、麹と大豆と塩で味噌が作れる。三五八やべったら漬などの麹漬けが作れる、今はやりの塩麹が作れる、糠と塩でたくあんができる、糠漬けができる。私たちの先祖は、主食を米に決め、その米で美味しい食生活が送れるように豊かな発酵醸造文化を残してくれました。これらを私たちが大切に受け継ぎ、更に発達させていけば、米という日本で自給できる食糧だけで、美味しくて飽きなくて健康な食生活ができます。最近では、もみ付き玄米を黒焼きにすることで、黒焼き玄米茶が加わりました。
 メダカのがっこう自給自足くらぶでは、麹から作る味噌作り、醤油作り、梅干し作り、たくあんづくり、甘酒教室、黒焼き玄米茶作り教室、たくあん作りなど、会員農家が作った無農薬栽培の原料と日本の海塩で作るワークショップを開いています。毎年1つずつでも基本的な食料が作れるようになれることは、嬉しいことです。生きる自信が湧いてきます。ご一緒に学びましょう!