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中村陽子のコラム

2001年11月2日

塩の心は「みんな大切」

 海には、地球上の全ての元素が溶け込んでいるのに、結晶させた塩は、白くてキラキラしています。この世はたくさんの色が溢れているのに全ての元素は透明な白なのですね。太陽は光の白。雪は、暗闇でも白く発光し、朝露は命を内に秘めて輝いています。とにかく美しい、そして人も同じ、人が無心に何かをやっているとき、そばにいると、その人の美しい魂が感じられて、たじろいてしまうことがあります。ただただ大切に思う、そっとしておくか、触れるのがもったいないような、扱いに困ってしまう嬉しい感覚です。みんな大切。
 塩を作っている人たちも素適です。男の中の男という感じ、はがねのような強さと、命を愛するやさしさが感じられて、みんなカッコイイです。日本の海から日本の塩を取り出してみんなの命を支えてくれる人。みんな後光が射しています。
 塩の心は「みんな大切」、今地球上の生き物のバランスを決めているのは、海や水や土や腸内細菌のミネラルバランスです。人間にとって都合の悪く見える菌や、虫や、動物や、人間を殺すと、徐々に地球のミネラルバランスも変わってしまうでしょう。海の水は地球のエキス、塩はその結晶。
 きっと、誰も何も殺さなくてもみんながうまくいく方法があります。農業にも医学にも国際社会にも。それを考えるために頭があるのですから。


 最近、塩を作り始めた人が多いのと、それぞれ方法を工夫して、いい塩を作ろうとしているので、感謝を伝えに皆に会って取材したいと思っています。そう思ったのは、海のミネラル研究会という名前のせいか、塩に関する情報が自然に集まり、日本の自然海塩の浮ネどを作ったりしているのですが、これが何か空しいからなのです。私は一人一人とお話して、愛情をもって記載しているのですが、見る人は、「それでどれが一番いいの?」っていう感じなのです。評価と比較の世界。
 みんなおいしい塩なので、近くの海の塩を食べてください。塩こそ身土不二です。そして水や土を汚さない生活をしましょう。外国からこれ以上元素が入ってきて海が富栄養化しないように基本的に身土不二の生活をし、そして生産活動、経済活動を縮小しても楽しくみんな生きていける国にしましょう。日本には優れた生活術がたくさんあります。
 「みんな大切」を実行するには、見解の違う人も大切にしなければなりません。先日ちょっとした試練がありました。その方は、イオン交換膜法の塩を日本ではじめて作った人でした。これは世界にもない高度な技術なのです。話している内に、イオン交換膜は人間の赤血球の細胞膜をお手本に作ったということが分かりました。人間の赤血球の細胞膜は、ナトリウムだけを通し、カリウムを通さない、完全に識別できる非常に優れたもので、イオン交換膜は研究しても遥かに及ばず、カリウムの方がかえって多く通ってしまう、と言ってさかんに生命の絶妙さに感心していました。なるほど、そうだったのか、100%純粋な塩を追求しながら、命の完璧さに脱帽しているのか、でもそんなに命が精妙にできているなら、できるだけ多くの元素が入っている塩をとって、必要な選択を命に任せれば良いのではないか、と思って聞いていました。しかし、彼の情熱は伝わってきました。悪いのは見解が違うことではなく、それだけしか許可しない国の政策です。そのため塩作りの素適な人たちに、戦いの気持ちが残ってしまいました。今後、私は同じ間違いを犯すことなく、なんぴととも比較、批判、否定しないで、自分の思った道を歩もうと思っています。正義より、哲学より、何より人を大切にしたいから。
 「おたいせつ」という言葉は、日本に来た宣教師が、神の愛を日本語に訳すときに選んだ言葉だそうです。言い得ていますよね。最近、私は体調が悪いのですが、このことで、みんなが私を大切にしてくれるので、なんだかとても幸せです。ありがとう。みんなの愛を感じています。白隠禅師は、病気を治そうなどと大それたことを思わず、「ただ病患を観ぜよ」、身体の中の病んでいるところをただ観るだけでいい、と言っています。自分の身体の中に関心を向けると愛を注いだことになるのですね。みんなから頂いた愛を病患に届けます。
 私の場合、「更年期ですね」、という抵抗しがたい診断を貰って、自分のことより、最近結婚しない友人が多いことを愁うおせっかいおばさんになっています。男と女のことをもっと根本から考えたい、女は命をかけて子を産むのだから、男は命がけで口説かなければいけないのに、大事なことを忘れているのではないか、かく言う私もエネルギーの根源に気が付いていないのではないか、等々。とにかく、地球が死にそうなのですから、自分だけ健康になろうなどと思わず、地球に愛を注ぐ時ではないでしょうか。「みんな大切」という塩の心は地球の心です。