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中村陽子のコラム

2001年1月23日

粘土団子と緑の道

種を粘土団子で包んで、砂漠化の止まらない地球に蒔き、西はスペイン、ギリシャから、東は日本、中国から緑の道を伸ばし、つなげようという壮大な計画があります。
粘土団子と言うのは、日本の自然農法の父ともいえる福岡正信さんが考え出した素晴らしい農業技術で、無為自然、無の哲学を唱える福岡さんが唯一自然に許されると考えた人間の行為です。耕すことが最大のミステイクと言う彼は、多種多様の種を粘土で包み、ポイポイと蒔くだけです。どこに何が生えるかは自然が選びます。


水をやることも間違いの始まりで、水のあるところにだけ伸びる根は浅いので、強風に耐えられず水をやり続けないと枯れてしまうのです。特に砂漠地帯では水をやり続けると地中の塩分が浮き上がり、不毛の塩害地になってしまいす。一方、粘土団子は団子と大地の接点からたった一本の根を伸ばし、一本なので2mも3mもすごい勢いで細く長く根を伸ばし、自分で水分のある層を見つけるのです。水を確保した種は次に芽を出します。この葉っぱの面積が一万ヘクタールを超えると雲を呼ぶのですが、その様子は熱気球で空を飛ぶ人の話によると、砂漠の上を飛んでいる時に気球が自然に急降下するところが草原なのだそうです。どうも低気圧が出来るらしいのです。砂漠には雲も、河もあるのですが、草がないために雲がとどまらず、地表温度も高くなり、もともとある種が芽を出せないでいるのです。ここに粘土団子を蒔くと、粘土と言う物質は保湿性が高く、朝晩の寒暖差で降りる露を吸って種の初根を促し、水脈を掘り当てた草が地表を覆うことで地温が下がり、もともとある種が芽を出す環境を整える働きをするのです。
砂漠には、三千年以上前に文明が栄えて砂漠化したエジプトや中国のような砂砂漠と、二千年以上前に文明が栄えたギリシャ、ローマのような礫砂漠と、百年前までは森だったアフリカの粘土砂漠などがあります。アフリカのような若い砂漠は、熱帯の気候も手伝って、種を蒔いて六週間で緑に覆われ六ヶ月もすれば果樹も成るほど早く緑化するのです。1998年から粘土団子を蒔き始めたスペインのマヨルカ島や、ギリシャは、かなり深刻な礫砂漠で、しかも緯度も高く気温が低いので、アフリカなら六週間の成果が出るのに半年かかりますが、確かに根付き1年で実を結び種が落ちるところまでいっています。ギリシャ政府は、アテネオリンピックの前に国土を緑化しようと、クレイボールセンターを作り、本格的にこの粘土団子に取り組もうとしているところです。
2001年から蒔こうとしている中国は、さらに深刻な砂砂漠で強風がすごいところですが、少し掘ると粘土質の層があり、粘土団子なら大丈夫なので、砂漠の中の河の両岸から蒔く計画です。
私はギリシャや中国に送る種を集めていますが、種に触れていると、植物の一生がすべて詰まっているのに、カラカラに乾いてもパックして酸素がなくても生きているんだなーと感動します。全国から種が集まってくると、なぜか胸がワクワクして「大丈夫、できる」という気持ちになります。だからギリシャから中国までの砂漠が緑の道になることが、理由なく信じられます。きっと種を仕込んだ粘土団子は、原子爆弾より力があるでしょう。
粘土団子は、これからの秘策です。