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中村陽子のコラム

2008年7月26日

自給自足屋はじめます。

 おむすび茶屋を始めて1年以上たちました。このお店のコンセプトは、農家支援だとハッキリしているので、開店当初から注目されました。お米選びの基準は、田んぼの生きものたち、「沈黙の田んぼ」ではなく、「いのち賑わう田んぼ」で穫れたもの。これは、食材選びの基準を、その食材が日本の自然を壊すようなところから生まれて来たのか、再生するようなところから生まれて来たのか、というところに置くということです。また、野草の季節には出来るだけ自分で自分の命を繋いでいる野草を使う。野菜も出来るだけ一世代限りのFIの種ではなく、在来種の種から育てたもの、したがって当然露地栽培の旬のもの。ですから、おむすび茶屋の惣菜には、決まったメニューはありません。今日畑で採れるものを送ってもらい、その野菜を見ながら毎週惣菜会議をして料理を考え、さらに毎日変化を持たせるための工夫をする、まるで家庭料理です。塩は日本自然海塩、味噌は農家の自家製(地元の大豆)、しょう油も国産大豆の無添加しょう油、そして砂糖は使わない。(もちろん人口甘味料は論外です)
 こうして、田んぼの生きものたちも、稲も、農家も、食べる人も、みんなが元気になる店の目標が実現できているわけです。
自給自足屋の素材選びの基準は自給率
 さて、今年は一歩前進して、仮想鎖国計画を進めるために、自給自足屋を始めます。食材選びの基準を自給率に置くとどうなるでしょうか。農水省の自給率ソフトによると、小麦粉24%、卵11%、しょう油0%、一般の日本人の食事がいかに自給率が低いかが分かります。しかし、おむすび茶屋での自給率はかなり高いはずです。先日、メダカのがっこう茂木の家で、自家製の無農薬・無化学肥料の米と野菜、畦に生えている野草4種(カンゾウ、ヨモギ、タンポポ、ツクシ)を、すべて国産無添加の調味料、自家製味噌、圧搾機で絞った国産の油で料理したところ、ほとんどの料理が自給率100%であることが分かりました。都会でこのようなメニューを作るのは至難の業ですが、自給自足に近い生活を田舎でしている人にとっては、調味料にさえ気をつければ、意外と簡単そうです。その代わり、どこへ行くのも車を使うのと、農作業も機械なしでは出来ないので、石油への依存率はかなり高そうです。牛や馬の復活も考えておかなければ、と思います。
自家製の調味料を増やしていきます。
 難しいのは、調味料です。今年はまずしょう油を作り始めます。塩はもちろん日本自然海塩を使いますが、大豆は明らかに足りないので、無農薬大豆の増産をできる方にお願いしたいと思います。酒、みりんは、安心できる醸造元があるので、自給率100%のものが揃います。有機溶剤を使わない国産の油も希少です。特にゴマは自給率0%なので、ゴマの栽培をお願いしたいと思います。油にするのはもったいないので、油分は、ゴマや落花生、クルミなどをすり鉢で油が出るまで良くすって和えもので摂るほうがよさそうです。
自給自足屋は創作郷土料理 
 メダカのがっこうはやはり命の田んぼのお米がメインなので、自給自足の素材は秋田県比内町ものを中心に使う予定です。なぜ比内町なのかというと、3年ほど前、メダカのがっこうに、比内町のナチュラルファーマーズの辻さんがやってきて、「私たちのところではもうすぐ田んぼをやる人がいなくなります。中村さんが考えているよりずっと深刻ですよ」と言いに来てから、ずっと気になっていたからです。彼は、農薬や化学肥料に頼らないEM菌を使った稲作を始めてかなり経ちますが、地域で長い間受け入れられなかったそうです。しかし彼についてくる人は徐々に増え、今では地域で信頼され1大グループになっています。また、1昨年から彼は、メダカのがっこうが目指す生物多様性の田んぼにするため、冬・水・田んぼを始め、昨年夏には、ミズカマキリなどの水生昆虫などがいました。また、彼はメダカのがっこうが今年から始める仮想鎖国計画、自給自足屋のコンセプトのよき理解者であり賛同者なので、仲間も素材も信頼できるのです。
保存食は自然エネルギーのかたまり
 食材探しに比内町に行ったのは3月始め、まだ雪が残り、山も畑も真っ白です。そこで地元の日常食べているものを料理していただいたのですが、山菜の塩漬け、すき昆布など海のものや山のものの乾物、漬物など、塩抜きしたり、水で戻して料理したものは、保存食であることを感じさせない美味しさでした。東北地方の保存食は、巨大冷蔵庫を使わず、塩や太陽エネルギーをフルに活用した、自然エネルギーの塊だと思います。私たちは、自然エネルギーというと、太陽光発電や風力発電を想像してしまいますが、塩蔵、醸造、発酵などの生きもの(菌)の営みを活用した技術や、乾燥など太陽エネルギーを溜め込んだ技術こそが、日本にあるものだけで生きていくための自然エネルギー利用技術なのでした。
 これらの素材を、都会の人たちの口に合わせ、スピード感を持たせたメニューを創造するところに、私たちの智恵を絞ろうと思います。皆さんどうぞ応援してください。