「仮想鎖国計画」で自給自足ゲームを始めよう
●おむすび茶屋1周年で次の段階への提案
おむすび茶屋メダカのがっこうは、おかげさまで1周年を迎えることが出来ました。みなさまのおかげでこの1年、佐渡、大田原、香取、郡山の4ヵ所で、合わせて1町1反(1.1ヘクタール)の生きものいっぱいの田んぼを支えることが出来ました。本当にありがとうございます。
メダカのがっこうは、米はもちろん、塩、大豆、味噌、醤油、野菜など、仲間の作った材料で、仲間の持っている技術で作ったものを出しています。この方向をさらに推し進めるために、今年から「仮想鎖国計画」を始めようと思います。この国で手に入るものだけで生きていこうとした時、江戸時代のように素晴らしい技術やシステムが生まれるのだと思います。私たちと一緒に、“自給自足ゲーム”をしませんか?おむすび茶屋のように、それを実現する舞台を増やしていく計画です。何を食べたらいいのか、どうしたらその体勢を整えることが出来るかは、これからメダカのがっこう自給自足クラブが提案していこうと思います。
どんな制度でも、それだけでは解決できない
メダカのがっこうは、既存の体制を批判したり、反対すると疲れるだけで時間が勿体ないので、肩書きという意識を持たない楽しい仲間と、いいと思うことをドンドンやっていくことにしています。ですから、やる気と覚悟さえあれば、考えたことを実行に移すだけの自由な社会であることが、とても重要です。ところが、時折この自由が邪魔されることがあります。
あー面白かった!おらが町のあるもの探し
茂木に惚れ込んで5年、棚田復元を始めて4年、家を借りて3年。関係者との交渉はあるものの、好きになるともっと知りたくなるのが人情。ところが地元の人とも挨拶や世間話をする程度、実に上っ面しか知らないのだ。
また地元の人にとっても、都会からやってくる人が、いったい何に惹かれてやってきているのか、また地元の何を誇って語ったらいいのか、よく分からないでいるようだ。お互いに、相手の真のニーズや、自分の魅力がつかめていないのだ。
そこで、この7月、茂木にどんな宝物があるのか、地元の方たちとメダカのがっこうのメンバーと一緒に、探検をしてみた。
本当の環境教育ってなんだろう
●子どもたちは、やり切る体験をさせてあげたい
先日、ある農家で、情けない体験学習田を見ました。イネの植え方はめちゃくちゃ、イネが何処にあるのか分からないほど草ボウボウの田んぼです。そこで草取りも中途半端のまま、生きもの探しに興じる子どもたちに会いました。かつて、メダカのがっこうも、農家の好意に甘えて中途半端な田んぼ体験をしていたことがあります。しかし、これを廃して行かないと、日本の自然再生を託す子どもたちの環境教育にならないと反省し、昨年よりメダカのがっこう方式の田んぼ体験をはじめました。
アクエリアン革命が始まっている
●命を育む水の技術
21世紀は水の世紀。この6月、万博協会から「持続可能な地球環境に有効な技術100件」に選ばれた「藻類の働きに注目した緩速ろ過装置」と「ふゆみずたんぼ」の2つの技術は、まさに命を育む水がテーマです。水といえば、21世紀のもう一つのテーマである自然エネルギーは、人間が逆立ちしても真似できない光合成で効率よくエネルギーをつくる緑の働きや、必要に応じて次々と現れる微生物の働きを活用することが最善の方法だと思いますが、これも命を育む水の使い方が技術の鍵になります。
土・水・米は生きものたちがつくる
●人知を超えた自然の働きに感動したできごと
あれは日本海ナホトカ号重油流出事故の時でした。私は、油を食べる菌の研究など、バイオ科学が進んでいると聞いているのに、相変わらず界面活性剤しか撒けない国の対応は、遅れているのではないかと思い、海岸に流れ着いた重油の塊を、数人の菌の研究者に送って実験をしてもらったり、科学技術庁に今後の重油流出事故の際、バイオを使った対応を研究してもらいたいと、意見したりしていました。
しかし2つとも大きな問題がありました。菌の研究者のほうは、菌の秘密が流出することを恐れ、公開実験を辞退したり、国のほうには、変化する恐れのある生命(菌)を海に入れることはできないという法律があり、私の計画は頓挫しました。
大潟村での感動
秋田県の大潟村に行ってきました。前回ご紹介した緩速ろ過の研究者である中本信忠先生を囲んでの勉強会があったからです。大潟村といえば、八郎潟の中を堤防で囲んで作った大きな島で、海抜マイナス地帯。山から流れこむ水もなく、みんなの命を支える水への関心は、とても高いところです。
大潟村で15町歩の水田を作っている相馬さんが、中本先生を島の染み出し水に案内しました。大潟村の周りは、湖がドーナツ型にあり、その水はお世辞にもきれいな水には見えません。その外湖の水が堤防に染み込み、40メートル内側の土手から染み出していました。この外湖からの水は、時速2センチ、約80日かかって土手から染み出してくるのです。
中本先生が、これを見て、「この方法が一番いいんですよ。これは良い水です。」と言って一口すくって飲みました。私もマネをして飲んでみました。柔らかくておいしい水でした。相馬さんをはじめ大潟村の方々は、びっくりしていました。今までこの水が、とても人が飲めるような良い水だとは、思っていなかったのです。
生命を活かす技術体系
最近、緩速ろ過の浄水システムを知りました。これは、200年前のロンドンで発明されたもので、いたって簡単な装置です。大きな深いプールの底に土や砂を敷いて水を溜めます。すると、水面には糸状藻類が発生し、その藻類が光合成によって酸素を出し、生きものを養います。この環境下で砂底数ミリのところに発生するたくさんの微小な生きものたちによって、菌などを食べてもらい、水をきれいにするのです。
稲を育てる気持
「ふつう稲を生産するって言いますけど、生産するって、命あるものに使う言葉では、ありませんよね。子どもを生産するって、言いませんから。だから僕は、稲を育てることにしたんです。」 胸にジーンと来る言葉でした。
この言葉の主は、琵琶湖の湖北地区で、不耕起栽培で稲を作っている柴田さんです。彼は、お父さんから、農業は将来性のある仕事ではないから、自分の好きなことをするようにと言われ、都会に出て、グラフィックデザイナーの仕事をしていました。仕事は順調でしたが、都会そのものの空気に馴染みきれずにいた時、故郷で田んぼをやっていた身内が次々と農薬による病気や突然死に遭い、彼は守り手がいなくなった田んぼを引き受けるため、故郷に帰る決心をしました。
リーダーは要らない
川の中を群れで泳いでいるメダカが、急に向きを変える、空高く編隊を組んで跳んでいたガンの群れが、急旋回をする、海でイルカや鯨など捕食される敵に遇ったイワシの群れが、球体になって転がるように被害を最小限にくいとめる、これらの見事に統制のとれた動きをする野生動物の群れに、リーダーはいないそうです。
自然界で生きていくためには、全体の感性をフルに活用して、危険を一番早く察知した仲間の動きに、みんながすぐ連動して、身を守るのですね。もし彼らにリーダーがいて、残りがみんな従わなければならないとしたら、もっと危険率が高まり、動きもバラバラになるだろう、と言われています。