8月23-24日大地の再生講座(山梨県白州町)
山梨県白州町にあるメダカのがっこうの理事 向山邦史さんの五風十雨農場の大地の通気通水改善作業を始めて2年たちました。2年前の夏、農場の東を深いコンクリート水路があり、斜面の通気と通水が止まることで、有機ガスとヘドロのグライ層がたまり、樹木が弱り枝が下がり、夏でも葉が茂らなくなるほどでしたが、この2年間に、それが全体に改善され、大地のアク(有機ガスとヘドロのグライ層)が抜けて、樹木は元気を取り戻し、実のなる木には実がたくさんつくようになりました。この夏にも農場の田んぼにイノシシが入り電気柵をしていなかった田んぼがやられてしまいましたが、獣害の根本的な解決策は、時間がかかりますが、山の実のつく樹木を元気にすることだということを忘れてはならないと思います。
沢風が吹く水路湿り気がある斜面
また以前乾燥していた斜面も、樹木の根が元氣になり、草の根が細根化されたことで、湿り気を取り戻し、多種多様な小さな草が生え始めています。
またコンクリート水路の上流にある自然水路も終点のコンクリートの一部を壊し、アクだまりを抜くことで、通気通風を取り戻し、水が流れるようにする作業をすることで、沢風が復活しています。しかし、終点がコンクリートであるため定期的なアク抜きが必要であり、水流を回復させるメンテも定期的に必要です。
全国で起きている大規模な土砂崩れも、コンクリートの立派な砂防ダムを作ることで安心し、折々に大地の通気通水を見ることがなくなった人間と自然との付き合い方の問題が根本にあると思います。大地に差し込まれたコンクリートの壁は、山の斜面の大地に有機ガスとヘドロのグライ層を広げ、樹木の根と草の根を弱らせ、斜面を乾燥化させ、もろい斜面にしてしまいます。大地の再生講座で改善作業と実践し、斜面の変化を木々や草の変化を通して感じていると、この問題が体でわかるようになります。大規模は土木工事は命に関しては何も生み出しません。大地の通気を回復させるための1つ1つの人間の作業が、大地を樹木1本1本から生き返らせるのだと思います。私はその働きをする人間になることと、仲間を増やすことをやっていこうと思います。
溝切り作業上の田からの泥水
さて、今回初めて田んぼの改善作業を行い、大変勉強になりました。1枚の田んぼの1画にコナギが茂り稲が委縮しているところがありました。見ると道が泥水でいっぱいで、下がったところにある田んぼに泥アクがたまっていました。その泥水は反対側の田んぼから染み出てくる水が原因のようです。矢野さんは道路に水の道を作り、泥水を水路に流すルートをつけ、泥水が田んぼに流れないように改善しました。これで今後この田圃の有機ガスが減り、コナギの勢いが減り、稲の勢いが増してくるはずだということでした。
泥水だけでなく、田んぼの中のムラは、田んぼの中の水の流れを葉っぱの葉脈のように行き渡らせ水が淀まないようにしたり、畔の草刈りなどで田んぼの上の風の流れを良くすることで改善することができるようです。
田んぼの改善は、今後も勉強して、草や稲の育ちのムラに悩む農家の役に立ちたいと思います。
(報告:中村陽子)
7月19日20日大地の再生講座(山梨県白州町)
2012年の8月から矢野智徳さんの指導の下、メダカのがっこうの理事、向山邦史さんの五風十雨農場の改善ワークショップを始めて2年。矢野さんは「杜の園芸」という会社をされていますが、矢野さんいわく「杜」とは人間が大自然の神様からお借りした里山で、汚さず傷めずに使うことを約束した場所だということです。その約束を実行するのに必要な技術を研究し施工しているのが矢野さんです。この「杜の土木」と対極をなしているのが、砂防ダム、護岸工事、U字溝などのコンクリートを大地に差し込む土木です。これらは人間の体の血管を押さえつけるように、大地の通気・通水を遮断し、滞った空気は有機ガスに、滞った水はヘドロに変化し、木の根や草の根を弱らせ、斜面を乾燥させ、大規模な崩落の原因になるのです。しかし私たちが山梨県白州町の五風十雨農場という小さな1点からの改善を始めたところ、この大地は息を吹き返し、枯れかけていた大木は元気に、埃っぽく枯れた水路は清流に、ぬかるみは草原に変わってきたのです。しかしここまで来て自然は勢いをつけて原野に戻そうとしているので、今回は人間が手綱を引くためのメンテをすることになりました。地球の世話は、定期的なメンテが必要なのです。そのうちの3つを紹介します。
①写真は五風十雨農場までの道で、雨と車の轍の跡がひどく埃ぽかったのですが、ツボに当たるところ数か所の水切りだけで、くぼみに土砂がたまり、道脇に生えていた荒根の草から背の低い細根の草が帯のように生えるようになったところです。道も埃っぽくなくなりました。矢野マジックと言えると思います。
②写真は、斜面の草刈りの方法ですが、左は植木を残して地面が見えるほど短く草を刈ってしまったところ。これだと強い夏の太陽の下、植木も土にも厳しい状況になります。右は風がやったレザーカットのように、強く高くなる部分を撫で切りにし、風が通るようにし、全体の風合いも考えた草刈りです。
③写真は自然水路の通りをよくするように、自然の蛇行と等速の水の流れを復元する作業をこの2年していたら、沢風が復活し、かちかちに乾いていた沢の斜面はしっとりと柔らかくなり、シャベルを立てるとサクッと入るようになったところです。白い根は藤の根っこで、乾いていた時に斜面を支えるという役目を果たしてくれていたもので、この藤ヅルに絡まれていたコナラは弱っていましたが、今や形勢は逆転、コナラが元氣になり藤ヅルの勢いが止まりました。
大地の再生講座はこれからも続きます。地球に住まわせてもらっている私たち人間です。地球の世話の仕方を勉強して作業に加わりませんか?
現状を知れば知るほど、大地が呼吸できずに苦しんでいることがわかり、絶望的な気持ちにもなりますが、一つでも改善作業の成果が見えると途端に希望がわいてきます。「風の谷のナウシカ」で怒り狂ったオウムの真っ赤な目がある1点からブルーに変わり全体に広がっていく感動的な場面を覚えていますか? オウムの暴走は巨神兵という大きな力でも止められなかったのが、1つの命を群れに返すことで、大地との絆を取り戻すことができたのです。これが環境問題や農業問題や手におえなそうな大問題を抱えている私たちが持つべきイメージではないでしょうか。ご一緒にメダカのがっこうと歩みましょう。(報告:中村陽子)